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世界が滅んだ朝 – pattern B –

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2人用(男性1;女性1) / 1106字 / 悲恋から終わるもうひとつのお話

↓この台本には別パターンがあります↓

登場人物

A:女性。記憶喪失。跳ねっ返りのリアリスト。
B:男性。記憶喪失。詩作趣味のロマンチスト。

本文

A01「ここはどこ? わたしはだれ?」

B01「ここはここ。君は君だよ。なにやら世界は7時間前に滅んだらしい」

A02「答えになってない。言ってる意味がわからない。いったいここはどこなの?」

B02「ホテルだね。地上40メートルのスイートルーム。素敵な眺めだ」

A03「やっぱり答えになっていない。ここはどこなの?」

B03「ようこそ新しい世界へ。この世で最も新しい人」

A04「あなたは誰?」

B04「僕は僕。それしか知らない。それしか要らないんだ。ここはここ。僕はそれだけで充分」

A05「違うわ。そんなの間違っているわ。ここはどこ? わたしは誰? あなたは誰? 知らない。知りたい。どうして――、あなたは悲しそうなの?」

B05「そうか、それが君なんだね。君は優しい人なんだそうだ。けれど君が勇ましい人だとは、情けないことに、昔の僕は気づかなかったらしい」

A06「あなたは誰?」

B06「僕が持つこの手帳によると、僕と君とは恋人だったらしい。お互いにお互いを愛して、だけどそれは許されなくて、2人で逃げて、追い詰められて。そうして、2人は最後に特別な薬を飲んだ」

A07「特別な薬?」

B07「思い出を無かったことにする薬。要するに、出会ってはいけなかった僕らは、出会ってからのことをすっかり忘れることにしたわけさ。僕と君の世界は7時間前に滅んだ。ここにいる僕らは、さしずめその残りかすってところかな」

A08「迷惑な話ね」

B08「ぐうの音も出ない」

A09「何もわからないままこんなところに放り出された身としては、腹立たしいにもほどがあるわ」

B09「君は本当に勇ましい人だね」

A10「あなたが感傷的に過ぎるのよ」

B10「僕が目覚めたとき、僕と君とは同じベッドの中にいた。僕の左手は君の右手と強く、強く繋がれていたんだ」

A11「……そう」

B11「ごめんね。僕がこの世に生を受けた2時間前、僕の人生最初の繋がりは、温もりは、君のものだったんだよ」

A12「それは、迷惑な話ね」

B12「いいや。ただただ悲しいと思った」

A13「あなたは優しい人ね」

B13「君も、たしかに優しい人だ」

A14「私が目を覚ましたとき、初めに見たものはあなたの顔だった。知らない誰かの、泣きそうな、慈しむような、優しい微笑みだった」

B14「それは……いや、なんとも、照れくさいね」

A15「ご縁があればまたお会いしましょう。思い出が消えた今は無理でも、いつか、どこかで。ひょっとしたら次の次の次の世界あたりになってしまうかもしれないけれど。袖触れ合うも多生の縁、なんて言うでしょう? ……うん、悪くないわ。さようなら。またね」

B15「さようなら。またいつか、どこかで」

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