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いつか遙けき楽園を謳う

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5人用(不問5) / 2447字 / ポストアポカリプス(かわいい)なやつ

↓この台本はリメイク作です↓

登場人物

A:うさぎさん。旅人かもしれない。
B:ナレーション。世界観を間違えているかもしれない。
C:うさぎさん。厨二病かもしれない。
D:うさぎさん。やや口が悪いかもしれない。
E:草。

本文

A01「春だぴょーん! ぴょん、ぴょん♪ うさぎがぴょん♪ また来てぴょんぴょん♪ 3羽そろえば――」

B01「それが、第三次世界大戦前最後の平和な光景だった――。もはや修復不可なまでに膨れあがった東西大国間の憎悪の連鎖。ただただお互いを絶滅させるためだけに斉射された幾万発の核ミサイルは地球上全てを焼き払い、それですら飽き足らず地平線のくっきり見える焦土を2度、3度と繰り返し耕した。死の灰が一面を覆い、それから1度目の冬が訪れ、2度目の冬が訪れ、3度目の冬が訪れ、間もなく4度目の冬が訪れようとしていた――」

・・・・・・

C01「ねえねえ、うさぎさんうさぎさん」

D01「どうしたぴょん? うさぎさん」

C02「やがては死に至る存在であるボクらにとって、この壊れた世界で生きることは幸福たりえるのだろうかぴょん」

D02「おめー、頭イカれちまったんじゃねーかぴょん?」

C03「ははは・・・。そうだよねぴょん。この世界で唯一ボクだけが直視する破滅的な現実。この視座こそがボクの心を孤独に苛むぴょん。同胞たちはこんなにも傍に寄りそい、親しくしてくれているというのに、ボク自身が、ボクだけが、こんなにも遠いぴょん・・・」

A02「おおーい! うさぎさん! それと、うさぎさん!」

D03「おや、懐かしい顔じゃないかぴょん。たしか君は・・・、うさぎさんだったねぴょん」

A03「へへっ。当たりぴょん。忘れないでいてくれて嬉しいぴょん」

D04「うさぎの顔を覚えるのは得意中の得意ぴょん。これからの時代、野を跳ねるうさぎにもインテリジェンスが求められると見せかけて全然そんなわけないぴょんけど、ちょっとした特技ぴょん」

A04「さすがうさぎさんは賢いぴょん。よくわからないけど。ところでうさぎさん、あとうさぎさん。今ってヒマぴょん?」

D05「いつもどおり草を食べてるところだったぴょん。365日いつでも草を食べてるぴょん」

C04「残念ぴょんが、あいにくボクは忙しいぴょん。ちょうど己が運命を懸けた探求に挑んでいるところだぴょん。草を食べながら。人生とはまるで底なし沼のようだぴょん。ちっぽけなボクらはその沼の底で必死にもがいているんだぴょん」

D06「底なし沼なのに底に足ついてるじゃねーかぴょん」

A05「だったらちょうどいいぴょん。実はちょっと向こうに行ったところにおいしい草が生えているのを見つけたんだぴょん」

D07「おいしいぴょん?」

A06「おいしいぴょん」

D08「どのくらいぴょん?」

A07「スコヴィル値で表すなら・・・、だいたい30万スコヴィルってところぴょん」

D09「それはすごいぴょん。もうすぐ冬になるから、今のうちにたくさん食べて栄養を蓄えておくぴょん」

C05「やむをえないぴょん。今すぐ赴こうではないかぴょん。つまるところ、うさぎの本分は草を食べることに尽きるぴょん」

A08「うんうん。こっちだぴょん!」

・・・・・・

A09「ぴょん。ぴょん。ぴょん」

D10「ぴょん。ぴょん。ぴょん」

C06「ぴょん。ぴょん。ぴょん」

A10「ふう。長旅だったぴょん」

D11「3回も跳ねなきゃいけないとは結構な距離だったぴょん」

C07「だが人生はこれすらも比べものにならぬ途方もない道行きぴょん。たどり着くべきゴールも定まらず、道標もなく、五里霧中、暗中模索・・・。唯一、星の光だけが友達ぴょん」

D12「それで・・・、そういえばボクたち何しにここまで来たんだっけぴょん?」

A11「忘れたぴょん!」

C08「それも一興ぴょん。もとより我々は道なき道を進む旅人ぴょん。ボクらは未知の探索者。道はボクらの後ろにできるものぴょん。行く先をふさぐ草は全部ボクらが食べ尽くすからだぴょん」

E01「タベナイデー! タベナイデー!」

A11「おや。おいしそうな草だぴょん」

D13「赤い実もついていてかわいらしいぴょん」

E02「タベナイデー! タベナイデー!」

C09「さらばだ友よ。我が永遠のライバル、ボクらがぴょんぴょんする足を止めざるをえないこの世で唯一の理由、甘美な草。おいしく食べてやることがただひとつの餞(はなむけ)だぴょん」

D14「あむあむあむ!」

A12「もぐもぐもぐ!」

C10「ふごふごふご!」

E03「タベナイデー! タベナイデー! アーッ!!」

・・・・・・

A13「――どうだったぴょん?」

D15「うーん、普通だったぴょん。37点」

C11「草はどれだっておいしいぴょん。100点」

A14「うんうん。普通が一番だぴょん。それじゃ、ボクはそろそろ行くぴょん」

D16「また旅に出るのかぴょん?」

A15「そうぴょん」

D17「どこに行くぴょん?」

A16「忘れたぴょん」

D18「何しに行くんだぴょん?」

A17「忘れたぴょん」

C12「何のために生まれて、何のために死んでいくのか・・・。この世はおしなべて、およそあらゆるものが無価値だぴょん。ボクたちの人生には意義も目的もないぴょん。神は死んだんだぴょん。永劫回帰。ボクたちの人生の価値はボクたちが決めていいんだぴょん。せいぜい気高く、誇りを持って生きるぴょん。無機質な人生を自分色に染めあげてこそ、うさぎはうさぎたりうるんだぴょん」

D19「おめー、何か小難しいこと言っているふうだけど、今それ関係あるのかぴょん?」

A18「あれ? ボク何しようとしていたんだっけぴょん? うさぎさんの話が長くて忘れちゃったぴょん」

D20「とりあえず草を食べるぴょん。雪が降る前にたくさん栄養を蓄えておくんだぴょん」

A19「食べるぴょん。食べるぴょん」

D21「あむあむあむ!」

A20「もぐもぐもぐ!」

C13「ふごふごふご!」

E04「マタタベルノー!? ヤメテー! アーッ!!」

・・・・・・

B02「破滅の時代は終わった。互いに武器を突きつけあい、殺しあう愚かな者どもはもうどこにもいない。だが、いかなる時代にあれど生きることは戦いだ。進め。それぞれの生き様をまっすぐ貫くために。うさぎにはうさぎの人生があるのだから――」

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