2人用(女性2) / 1302字 / 悲恋から終わるひとつのお話
↓この台本には別パターンがあります↓
登場人物
A:女性。記憶喪失。ハードタイプのグミみたいな人。
B:女性。記憶喪失。ザラメをまぶしたシューみたいな人。
本文
A01「ここはどこ? わたしはだれ?」
B01「ここはここ。君は君だよ。どうやら世界は7時間前に滅んだらしい」
A02「答えになってません。言ってる意味もわかりません。ここはいったいどこですか?」
B02「ホテルさ。地上40メートルのスイートルーム。窓の外をごらん、君の新しい世界は美しいね」
A03「らちが明きませんのね。いったい私はどうしてここに?」
B03「覚えていらっしゃらない?」
A04「そしてあなたは誰?」
B04「初めまして。いやさ、改めまして、初めまして。僕は僕。君が君であるように、僕は僕。ただの僕さ。もはや他の何者でもない」
A05「違うわ。あなたは間違っているわ。わたしはわたし? あなたはあなた? いいえ。いいえ。わたしはきっと、誰かのための誰か。きっと大切な誰かがどこかにいる。あなたも、そうよ」
B05「ああ! これこそが君なのか。優しい君。けれど君がこんなにも強い人だとは、愚かだった僕には知り得なかったらしい」
A06「あなたは誰?」
B06「ここに1冊の手帳がある。記されているのはどこにでもある悲劇。一人の女と一人の女が出会ってしまった。ただそれだけ。ただそれだけのありふれた悲劇。女たちは許されないまま恋焦がれ、狂おしい愛に焼けただれ、この世界にただ2人、蜜月はまたたく間に焼け焦げた。残されたものは、ただ過去を振り返るばかりの壊れた想い」
A07「悲しいわね。過去にすがっていては未来は開けないもの」
B07「そう。だから2人は大切な想いを捨てることにした。何もかもを忘れられる魔法のワインを飲み干して、思い出も、繋がりも、愛も、全てを塵に帰した。……それが、僕と君の7時間前。世界が滅ぶ瞬間のお話さ」
A08「悲しいわ。ただただ悲しいことだわ」
B08「だけど仕方がなかった」
A09「そんなことない。きっと何か、それでも何か、出来ることはあったはずだわ。だって、そうでしょう?ふたりの絆は他の何物よりも尊かったはずなのですから。何を手放すよりも重く、千切れそうな痛みに苛まれたはずですから。愛は尊いのよ」
B09「君は本当に強い人だね」
A10「あなたが儚すぎるのよ」
B10「僕が目覚めたとき、僕と君とは同じベッドの中にいた。僕は君の腕に抱かれて、かすかに瞼を濡らしていたんだ」
A11「そうね。ほんの数分お話しただけでもわかる。きっとあなたはそういう人よ」
B11「僕が生まれて初めて得た安らぎは君のものだったんだ。温もりも、喜びも、そして愛おしさも」
A12「それは、恋じゃないわ」
B12「わかってる。わかってるんだ」
A13「あなたは優しい人ね」
B13「君も、やっぱり優しい人だ」
A14「私が目を覚ましたとき、初めに見たものはあなたの顔だった。知らない誰かの、優しくて、苦しくて、脆く崩れそうな泣き顔だった」
B14「ごめん」
A15「きっといつか、また会いましょう。あなたがもう一度恋を覚えて、それでもなお私を忘れられずにいたなら。そのときはきっと、私の方から会いに行くわ。次に世界が滅ぶ、そのときまでに。だからもう泣かないで」
B15「ありがとう。……次は、君を守れるくらい、きっと、強くなるから」
コメント