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砂々

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2人用(不問2) / 726字 / 掛け合いのテンションが乾いているやつ

登場人物

A:砂の世界の人。
B:話を聞く人。

本文

A01「いつからだったかな。ある日突然、この世界の何もかもが砂に変わったんだ。僕がただ触れるだけで何もかもが崩れてしまう。最初は自分の部屋のドアだったかな。ドアノブに触った瞬間、目の前から消えてしまった。僕が驚いて声を上げると、心配して母さんがやってきた。そして母さんも消えてしまった」

B01「なるほど。その時から君はひとりぼっちになったんだね」

A02「そう。僕が持っていた何もかも、あらゆる全てが目の前で砂に変わってしまったよ。朝ごはんのバタートーストも、教科書の詰まったカバンも、そしてもうこの世にはいない、僕の大切な人たちも」

B02「それでも君がひとりぼっちにならない手段はあったと思うよ。君が触れさえしなければ、何も消えたりしないんだろう?」

A03「人と人との触れ合いがない生き方なんて、そんなもの誰にも許されないよ。この世界はそういうふうに出来ている。ある時、目付きの悪い不良に絡まれて殴られそうになった。だけど拳が届く前にそいつは消えてしまった。ある時、僕を哀れんで抱きしめようとした女の人がいた。だけど温もりが届く前に、その人も消えてしまった。そういうものさ」

B03「もしも僕が今ここで、この右手をまっすぐに突き出したなら、僕も消えてしまうのかな」

A04「そうだね。僕はそうして人が砂に変わる瞬間をたくさん見てきた。それが君の目的かい?」

B04「いいや。ただ、ちょっとした好奇心があってね」

A05「好奇心?」

B05「君が触れたものは砂に変わる。あらゆる全てが消えてしまう。だったら、君が今立ってる地面は、いったいどうなってしまうんだい」

A06「あ……」

B06「落ちた。落ちた。消えてしまった。砂の世界は消えてしまった。さようなら、儚い人」

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