3人用(男性3) / 656字 / 実は夢十夜のパロディ
登場人物
地の文:男性。物語の語り手。
A:男性。ただのアニメショップ店員だが、どこか奇妙な言い回しをする。
B:男性。いわゆる魔法使い。もしかしたら本当に魔法使いかもしれない。
本文
その男は、町外れの小さなアニメショップでフィギュアを買い漁っていた。
ずんぐりとした腹、脂ぎった指先、疲れきったような細い瞳。
その容貌から、僕はその男の年齢を30代半ばと予想した。
計ったかのようなタイミングで、レジの店員が男に声をかける。
A01「お兄さんはおいくつですか?」
B01「何歳になったか忘れたよ。でも18歳は超えてるね」
A02「お兄さんはどこから来たんですか?」
B02「へその奥からさ」
A03「お兄さんはどこへ行くんですか?」
B03「あっちへ行くよ」
A04「連れて行くのはこの子たちだけにしてくださいね」
店員が手渡したアニメ柄の紙袋を両手に、男は店を出た。
僕が男に追いつくと、彼は道路の真ん中にいて、3,4人の幼女に見守られながら六芒星を描いていた。
B04「これから二次元への扉が開くから見ていなさい、見ていなさい」
男はそう言うと、六芒星の周りをぐるぐると回りだした。
B05「見ていなさい、見ていなさい、いいね」
怖がっているようにも見えた。楽しんでいるようにも見えた。
やがて男がぴたりと立ち止まった。男は六芒星の真ん中に先ほどの紙袋を2つ置いて、言った。
B06「彼女たちが連れて行ってくれる。今見せてあげる。今見せてあげる」
男は『もってけ!セーラー服』を歌いながら、またぐるぐると回りだした。
僕は二次元への扉が見たいから、幼女たちと一緒にいつまでも男を見守っていた。
突然トラックが現れて男を跳ね飛ばした。
男はフィギュアたちとともに、満ち足りた顔で遠くへ消えていった。
二次元への扉が開かれることはなかった。
コメント