3人用(男性3) / 3718字 / 落ちてきた星を探す青春の1ページ(長い)
↓この台本には別パターンがあります↓
登場人物
A:男性。藤村兄。真面目な性格で、いつもカリカリしている。探し物は『隕石』。
B:男性。植木。奔放でロマンチスト、おまけにやや厨二病。探し物は『流星のかけら』。
C:男性。藤村弟。人当たりがよく、純真。何気にノリがいい。探し物は『流れ星』。
本文
A01「流れ星が落ちてきた。流れ星がこの街に落ちてきた。それはもう、美しい光景だった。昨夜午前1時38分。7色の軌跡が空の天辺からまっすぐに落ちてきた。地上に降り立ってぱっと輝いた。ほんの一瞬の、花火よりも儚い瞬きだった」
(※昼過ぎ。山道を3人が歩いている)
A02「はぁ、はぁ……。ほ、本当にここなんだろうな?」
B01「さあて、どうだろうな。見つかるといいよなあ、はっはっは」
A03「ぅおい!?」
C01「まあまあ。朝から街中の大人たちが一生懸命探してるのに、まだ見つかってないんだよ? 見つかったらラッキー、くらいに思っておかなきゃ」
B02「藤村弟の言うとおりだ。お前必死すぎ。もっと気楽に構えなきゃ、幸運の天使様だって引いちゃうぜ?」
A04「何でだろう、お前に言われると無性に腹が立つ。何が天使様、だ」
B03「はっはっはっはっは。……と、着いた。ここだ、ここ」
C02「ここ? 本当に?」
B04「ああ。間違いない」
A05「おいこら植木」
B05「何だ、藤村?」
A06「俺たちが探しているものはなんだ?」
B06「流星のかけら。七色のほうき星。神秘とロマンの結晶。ちなみに見つけたら一攫千金の大チャンスだ」
A07「そう、昨日空から降ってきた隕石だ。隕石だぞ? 本当にここに落ちたならクレーターができてるはずだろうが!」
B07「ばーか。そんなわかりやすい目印があるならとっくの昔に大人たちが見つけてるだろ」
C03「まあまあ、兄ちゃん。植木さんの言うとおりだよ。それに、昨日流れ星が落ちたところを見たの、植木さんだけなんだろ?」
A08「まあ、ウチからだと遠柳山(とおやぎやま)が陰になって、よく見えなかったからな」
B08「その点、俺はばっちり見たぞ。流星のかけらがこの遠柳山のふもとに落ちた、その瞬間をな」
A09「……はあ、信じるしかないか。わかったよ。さっさと探そうぜ」
B09「おう。藤村はあっち、藤村弟はあっちを手分けして探してくれ。俺はこのあたりを探しているからな」
A10「……ふう。しっかし、色も形もわからないものをどう探せばいいんだろうな」
B10「おお、これは!」
A11「どうした!?」
C04「もしかして見つけたの?」
B11「これを見ろ、天然の舞茸だぞ! 今日の俺はツイている」
C05「うわあ、大きいね」
B12「すごく……大きいです」
A12「バカ言ってないで真面目にやれ」
C06「あ、はは。ごめん、つい……」
A13「ったく」
B13「あっ!」
C07「なになに?」
B14「エロ本見つけた!」
A14「うるせーバカ!」
C08「あはは。植木さん生き生きしてるね」
A15「あれは単に遊ぶ口実ができて、はしゃいでいるだけだ」
C09「ふうん。でもさ、それなら兄ちゃんは何で流れ星を探しているわけ?」
A16「は? そりゃ……」
B15「おーい、藤村兄弟、ちょっと来てくれー!」
C10「はーい!」
A17「……」
A18「今度は何だよ。またくだらないものだったら承知しないぞ」
B16「はっは。いいからこれを見てみろ」
C11「足元? ……あ、もしかしてこれのこと? 地面に小さな穴が開いてる」
A19「お前……。これ、どう見てもただのアリの巣だろうが!」
B17「あっはっは。少し落ち着き給えよ藤村クン。……落ち着け。落ち着いて。頼むからその大上段に振り上げたシャベルを降ろしてくれよ、な?」
A20「……ったく。で、このアリの巣がどうしたって?」
B18「アリの巣じゃないぞ。よく見てみろ、アリなんて1匹もいないじゃないか」
A21「そりゃ、引っ越したんだろ」
C12「え、アリって引っ越しするの?」
B19「それだけじゃない。アリの巣というには少しばかり大きすぎやしないか、この穴」
C13「うーん……。言われてみれば、心なしか、気持ち大きい気がしないでも……」
A22「あー、つまり、あれか? 要するに、これは隕石が落ちてできた穴だと、そう言いたいわけかお前は。超高高度から落ちてきた隕石が、地面にクレーターもつくらず、この小さな穴だけ開けて、土の中にまっすぐ静かに潜っていったと。……あり得るか、バカ!」
B20「し、しかしだな。すでに大人たちが街中、それこそ舐めるように探し回ったにもかかわらずクレーターのようなものは一切見つかっていないんだ。ならば、何らかの特別な現象でこの穴の下に埋まったという可能性は否定できまい」
A23「その可能性は限りなくゼロに近いわ!」
C14「まあまあ、兄ちゃん。どうせ他にあてもないんだし、試しに掘ってみようよ」
A24「お前まで何を」
B21「掘ってみたい人ー」
B&C1『はーい!』
B22「多数決でお前の負けな」
A25「……はぁ」
(※数時間後。日が傾きはじめ、あたりの景色はオレンジ色に染まる)
A26「……で、見つかったか?」
B23「見つからないなー!」
C15「ないねー!」
A27「……お前ら仲いいな。あー、疲れた。休憩だ、休憩」
C16「はーい」
A28「日が落ちてきたな。あーあ、もうとっくに他の誰かが見つけてるんじゃないか?」
B24「そいつは残念な話だな」
A29「全ッ然、残念そうじゃないな」
B25「はっはっは。そんなことはない」
C17「植木さんはどうして流れ星を探しているの?」
B26「俺か? そりゃ、ロマンだからさ。遙かな空のかなたを旅してきた流星のかけら、かっこいいじゃないか」
A30「単純なやつめ」
B27「はっはっは」
C18「じゃあ、兄ちゃんは?」
A31「へ? そりゃ……、だって隕石だぞ?興味あるだろ」
C19「だから、どうして?」
A32「それは……。お、お前はどうなんだよ」
C20「僕? 僕は……、だって、なんだか楽しそうじゃん、こうやって探すの。兄ちゃんと植木さんと、こうしていて実際楽しいよ」
B28「はっはっは、かわいいやつめ。特別に俺の弟にしてやろう」
C21「あはは、それはちょっと。植木さんの弟って、きっとすごい苦労しそうだもん」
B29「ますますかわいいやつめ。このこの、こうしてやる」
C22「あはははは。助けてー」
A33「……あー、なんかイライラする。もう帰ろうぜ」
B30「どうした、弟を取られて嫉妬したか?」
A34「違う。ほら、もうすぐ日が落ちるし、暗くなったら大変……あれ?」
C23「兄ちゃん?」
A35「なあ、あれ、何だろう。ほら、あの木に引っ掛かってるやつ」
B31「ああ、確かに何か丸い石みたいな影が見えるな」
C24「僕、取ってくるね」
B32「待て待て、わざわざ木に登る必要はないぞ。ここは俺に任せとけ、ちょっと木を揺らしてやれば……。くらえ!スーパーマグナムデリシャスキィーック!!」
(※蹴りの凄まじいエフェクトとともに、手のひら大の石が樹上から落ちてくる)
C25「……すげえ。本当に落ちてきた」
A36「相変わらず非常識なやつめ」
B33「ふう。で、何だった?」
C26「あ、うん。……なんだろう、これ。水晶玉みたいに透き通ってて、内側から七色に光ってて、冷たくも暖かくもない変な触り心地」
A37「おもちゃ、にしては変わった材質だな。どうやって光ってるんだ?」
B34「ふむ。つまり」
C27「つまり?」
B35「これが流星のかけらか」
C28「へ?」
A38「まさか。上空1000kmから降ってきた隕石が、枝も折らずに木に引っ掛かったって? ありえないだろ」
B36「だが、お前も一目見た瞬間、これが流星のかけらだと感じ取ったんじゃないか?俺は信じるぞ、こいつが流星のかけらだ。そう感じた俺の直感を、俺は信じる」
C29「僕も。もしこれが本物の流れ星だとしたら、それはすごく素敵なことじゃない?」
A39「そんないい加減な」
B37「多数決。これが流星のかけらだと思う人ー」
B&C2『はーい!』
B38「というわけで、2対1でまたしてもお前の負け……」
A40「待てよ。誰が信じないと言った。……ああ、くそ。ああ、認めるさ。これが俺の探していた隕石……いや、こういうものだったらいいなあって、昨日流れ星を見たときからずっと思っていた。だから俺は探していたんだな。こいつは俺の夢だ。ロマンだ。くそっ、見ているだけでわくわくしやがる」
B39「にやにや」
C30「にやにや」
A41「な、何だよお前ら」
B40「いやー、ツンがデレる瞬間というのは、いつ見ても良いものですなあ」
A42「う、うるさい! いいから帰るぞ。足元見えなくなってきたし」
B41「はっはっは。ところで、この流星のかけらはどうする? 偉い学者にでも売りつけたら結構な金になりそうだが」
A43「別に、俺たちが持っていてもいいだろ」
B42「なるほど。我ら3人の友情の証にすると」
C31「にやにや」
A44「お前もう黙ってろ!」
C32「ところで、僕らのものにするにしてもさ、誰が預かるの?」
A45「そんなの誰でも同じだろ。じゃんけんでいいよ」
C33「それもそうだね。それじゃ、いくよー」
A&B&C1『じゃんけん、ぽん!』
(※以下、じゃんけんの結果に一喜一憂する3人の声とともに物語の幕が落ちる)
C34「勝ったー! へへー」
B43「くおおおおお! 悔しい、悔しいぞ!」
A46「ちっ、ついてない」
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