5人用(男性5) / 2946字 / 少年たちがなんか爽やかな感じの会話をするやつ
登場人物
A:男性。ショウ。マイペースな天然系。
B:男性。トモヒロ。面倒見がいい。
C:男性。独特な感性の持ち主。
D:男性。カツキ。天性のツッコミ体質。
E:男性。穏やかな性格だがツッコミは手厳しい。
本文
A01「昼、何食べるの?」
B01「みんな何が食べたい?」
C01「トモが決めていいよ。腹減ったーって、君が言いだしっぺだし」
D01「俺今月ちょいピンチだからマックがいい」
E01「寒いからとにかく店の中で食べようよ」
A02「わっ」
B02「ん? どうした」
A03「ごめん、ちょっとつまづいただけ」
D02「また? お前つくづく足元あやしいやつだな」
B03「この間も何もない道路の上で転んでたな」
D03「しかも横断歩道の真ん中でな」
E02「何それ、危ないなあ」
C02「でもそれなら今日はマシな方なんじゃない?ほら、そこの木の根っこにつまづいたんでしょ?」
D04「それが?」
C03「え? だから、何もないところで転ぶよりは、何かあるところで転ぶ方がマシじゃない?」
D05「意味がわからん」
B04「結果としてどっちも転ぶんだろ?」
C04「あれ?」
E03「大丈夫?」
A03「うん、この木につかまったから転ばずにすんだし」
E04「運が良かったんだね」
A04「あはは、そうかも」
D06「つまづかせたのもこいつの根っこだけどな」
C05「つまり一人上手ってわけか」
D07「え?」
B05「え?」
C06「え?」
E05「待って、えーと、つまり?」
C07「だから、あの木の根っこのせいでつまづいたのに、あの木の幹に助けられたってことは」
D08「あー、またどうでもいい説明の匂いがひしひしと」
C08「最後まで聞こうよ。だから、まずさっきの桜の木の根っこのせいでつまづくでしょ? で、次に」
B06「うん。もういい。そんなことはどうでもいい。頼むからこれ以上お前の不思議空間に巻き込んでくれるな」
E06「つまり僕らにはさっぱり理解できないことってことでオーケー?」
D09「正確に言うと理解できないというより、どうでもいい」
C09「酷いなあ」
B07「お前は説明が下手すぎる」
D10「それ以前に、思いついたことを何でも言っちゃうのはやめようぜ」
C10「えー」
E07「ドンマイ」
D11「また微妙にピントのずれたことを……」
B08「あれ、ショウは?」
D12「そういや居ねえ」
C11「いつの間に」
E08「あ。あそこ、さっきの桜のとこ」
D13「ショウー、何やってんだー?」
A05「あ、ええと……。ごめーん、先行っててー!」
D14「いや、先行けっていわれても……」
C12「どうしたんだろ?」
B09「俺行ってくるよ。ちょっと待ってて」
D15「俺も」
C13「捻挫でもしてた?」
E09「そういう風には見えなかったけど」
C14「お腹空いて動けないとか」
E10「まさか」
D16「どうしたのよ」
B10「怪我したんじゃないよな?」
A06「ごめんごめん。先行ってくれてよかったのに。別に何でもないからさ」
B11「怪我じゃないんだな? だったらせめて一言声かけろよ」
A07「ごめん。ちょっとぼんやりしてて」
D17「気がついたら居ないからびっくりしたじゃねーか。どうしたんだよ」
A08「あー、どう説明したものかな」
D18「うん?」
A09「さっきつまづいたでしょ? その時この木に手をついたんだけどさ」
D19「うん」
A10「その時この木から脈を感じた気がしてさ。どくん、どくんって」
D20「は?」
A11「何となく気になったものだから、こうやって幹に耳を当てて、ずっと聞いてた」
D21「脈?」
A12「うん」
D22「脈って、心臓の音のこと?」
A13「そうそれ」
D23「ねーよ。そもそも木に心臓なんてねーよ」
B12「道管を通る水の音が聞こえることがあるとは聞いたことがあるが」
D24「いやいや、これ、そういうのじゃねーよ。ちょっとやってみ?これ、単に自分の脈が聞こえてるだけだから」
A14「うん、正解」
D25「って、わかってるのかよ!」
B13「ないないって言いながらも一応真似してやってみるのな、お前」
A15「でもさ、自分の心臓の音なんてこういうときでもなきゃ意識しないじゃん。そういうのに気づかせてくれるこの木って、すごく優しい子だと思うんだ」
D26「……だめだ。こりゃ超弩級にわけわからん不思議空間だ」
B14「ショウさ、それまだ続ける気なのか?」
A16「うん、できれば」
B15「カツキ。悪いけど3人で先に飯食っててくれ」
D27「お前は?」
B16「こいつ一人置いて行くも気が引けるだろ」
A17「いいよ、トモヒロも行きなよ。腹減ったって言ってたじゃん」
B17「一人になりたきゃ普段の生活態度から改めろ。正直言ってお前を一人にするのは不安でしかたない」
A18「わかったよ。それじゃ、あと5分だけにする」
D28「しょうがないな。じゃ、俺行ってくるわ」
B18「ああ。頼む」
B19「……いい天気だな」
A19「春が近づいてきたって感じだね」
B20「それはさすがに気が早いと思うぞ。寒いし、その木だってまだつぼみがついてないだろ」
A20「あ、そういえばこの子、桜か」
B21「おいおい、お前も去年の春はこの桜並木を歩いただろ」
A21「そっか。入学式は向こうのコンサートホールでやったんだっけ。あの時とは見た目の印象が全然違うから気づかなかった」
B22「日本人なら桜の木くらい見分けつけろよ。ま、満開のときと今とじゃ全然違うっていうのもわかるけどな。満開のときは枝もろくに見えないし」
A22「満開のときの桜は、なんというか、並木全体としてきれいなんだよね。ぶわーっと一面真っ白で、風が吹く度ひらひら花びらが降ってきて、圧倒される感じ。まるで包み込まれるよう」
B23「うん」
A23「今は花も葉っぱもなくて、まるで死んでいるようだけど、ちゃんと生き物の匂いがする。この幹はひんやり冷たいけれど、ずっと寄り添っているとじんわり生命の温かみを感じられる。心臓の鼓動が聞こえてきても不思議じゃない、説得力がある」
B24「無粋なことをいうなら、それはお前の体温が木に移っただけだけどな」
A24「うん。でも、鉄とは違う。それも熱伝導率の違いに過ぎないけれど、それでもこの暖かさに、ほっとする。初め手をついたとき、この暖かさと、とくんとくんという音に、心底うれしく思ったんだ。この子は俺と同じだ。この子と俺は分かち合える。この子も俺も生きている。それはきっと本当だ。うまく説明できないし、おかしな話だけど、この子に友情を感じたといえば自分ではしっくりくるかな」
B25「無理に説明しなくてもいいぞ。俺は初めからお前の言うことを理解できると思ってない」
A25「だよね」
B26「ま、俺のことは放っておいて、ゆっくりそいつと語らえばいいさ」
A26「うん、ありがとう」
D29「昼飯買ってきたぞー」
B27「昼飯?」
E11「近くのコンビニに行って来たんだ。ホットコーヒーとミルクティーどっちがいい?」
D30「俺ミルクティーね。それとカルボナーラ」
E12「たまにはこういうランチタイムもいいと思わない? ちょっと寒いけど」
C15「懐かしい感じだよね」
A27「懐かしい?」
C16「だってピクニックでしょ、これ。小さい頃よく行かなかった?」
D31「ピクニックねえ」
E13「ピクニックかぁ」
B28「なるほど、ピクニックか。そういえば昔は楽しみにしていたな。まさかこの年になってピクニックをする日が来るなんて思いもしなかったが」
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