古巣のwikiから台本移動中です。まだ結構増えます。

もし明日世界が滅びるとしたら

この記事は約5分で読めます。
スポンサーリンク

3人用(不問3) / 2081字 / 人間が絶滅した世界に夢を呟くお話

登場人物

A:ちょっとアホの子
B:ちょっと粗野な子
C:ちょっと優しい子

本文

A01「ねえ。もし明日世界が滅びるとしたら、今日は何が食べたい?」

B01「何が食べたい、と言われても・・・」

A02「何でもいいよ。あ、でも、できるだけ夢があるやつがいいなあ」

B02「いや。そもそもだな。――私たちロボットだし」

A03「えー! 夢がないー! 夢のなかならロボットだって美味しいもの食べていいんだよ」

B03「いやいや。眠ることもないし」

C01「なになに。またいつもの?」

B04「いつもの」

C02「ほほう。へい、大将! やってる?」

A04「へいへいへーい! やってるよーう! 何にいたしやしょーか!」

C03「ロボットでも食べられるもの!」

A05「無い!!!!!」

B05「無いのかよ!」

C04「そこは夢見ようぜ! ビシィ!」

A06「・・・実際さ。人間様が食べるようなもの、一度は食べてみたくない?」

C05「スイカとか?」

A07「そう! そうそう! そんな感じ! なんで? なんでスイカ?」

C06「えー、だってほら、あー、・・・大きくて、たくさんエネルギー補給できそうだし?」

B06「想像力貧困」

C07「いちいちエネルギー補給のたびに違うものを食べるとか正直意味わからんし」

A08「・・・スイカ。メロン。キュウリ。トマト。ブドウ。クリ。カボチャ。タケノコ。カツオ。ブリ。ホタテ。ホッキ貝。カロリーメイト。ハクサイ。シイタケ。イチゴ。アスパラ」

B07「季節感メチャクチャだな」

A09「じゃあ秋! 焼き芋でしょ。大学芋。中華ポテト。スイートポテト。じゃがバターに、カボチャのポタージュスープ」

C08「季節のモンブラン。期間限定ポテトチップス。秋の味覚のチョコレートアソート。おつとめ品ワゴンに入りがちなあれやこれや」

B08「まあ、いろいろ作ったよなあ。昔はさ。ここの工場でも」

C09「あの頃はよかったねえ。うん。あれが“楽しい”ってことだったのかも」

B09「で、そろそろ満足したか? 私の知ってる人間様だったら『聞いてるだけで腹一杯にならぁ』とか言ってたところだと思うけど」

A10「ううん。私ね、やっぱり食べたいの。食べなきゃって思うの。なんとなく」

C10「・・・むしろ切実だねえ」

B10「無理だよ」

A11「どうしても無理? 噛み砕く口を取り付けて、味が分析できるセンサーも付けて、できれば食べたものを燃料に変える転換炉なんかも欲しくて」

B11「無理だ」

A12「じゃあ贅沢なんか言わないから」

B12「無理」

A13「なんとかしたいの!」

B13「時間が無いんだよ!」

C11「・・・あのさ。どうしてそんなに食べてみたいの?」

B14「・・・別に、聞かなくてもわかるだろ」

C12「話して。ちゃんと話したほうがいいと思う。私もたぶんわかるけど。でも、話したほうがいいと思う。私も聞きたいから」

B15「・・・時間、無いからな。有効に使え」

A14「うん・・・。あのね。私ね。人間様のこと大好きだったの。ずっと好きだった。みんな好きだった。人間様のためにできること、何でもやってあげたかった」

C13「そうだね」

A15「それでね。人間様、いなくなっちゃったじゃん」

C14「うん」

A16「それでね。私、きっと寂しいんだよ。大好きの反対って、きっと寂しいんだ」

C15「そうだね」

A17「人間様を感じたいの。もう一度。ここで。すぐそばで。私がいるところで。私も同じところで」

C16「だから食べたいんだよね?」

A18「・・・食べたい。人間様、私たちの作ったお菓子、みんな嬉しそうに食べてくれた。笑ってた。私も、嬉しくなりたい。人間様と同じ思いを感じたい」

B16「まあな。だから私たちここに集まったんだし」

C17「最後の人間様の、最後の命令だからね。叶えてあげるのが私たちロボットの幸せ」

A19「わかってる。みんな同じ思いだってわかってる。ここも、世界中の他の工場も」

B17「それがようやく終わった。長かったな」

C18「いやいや。全然短いよ。できるならもっともっと、みんな壊れてしまってもまだ終わらないくらい、ずっと人間様のために働いていたかった」

A20「全部終わってしまったから。だからね、余っちゃったあとほんのちょっとの時間、どうにかして人間様のことを感じていたかったの」

B18「・・・あのな。わかるだろ。人間様の最後の命令の意味」

C19「最後の人間様が死んだら、地球の上を爆弾だらけにして、全部全部いっぺんに壊してしまえって?」

B19「人間様はさ。私たちが寂しくならないようにって、私たちに終わりをくれたんだ」

C20「嬉しいね。たぶんだけど、こういうのって」

A21「――もし明日世界が滅びるとしたら、今日は何が食べたい?」

B20「だから食べられないって。食べられないから、まあ、そうだな」

C21「もう今日になっちゃったよ。――私はね、最初からこうやって、人間様のことお喋りしながら終わりたいってつもりだったよ」

A22「うん。・・・うん。ねえ、人間様だったらこういうとき、聞いてるだけでおなかいっぱいになるんだっけ?」

B21「あー・・・。こういうときはな、胸がいっぱいになるらしいんだ」

コメント

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました