2人用(不問2) / 885字 / 奇跡のバーゲンセール
登場人物
A:大きな魔法使い。奇跡と魔法を教える人。
B:どこにでもいる魔法使い。奇跡と魔法を教わる人。
本文
A01「僕は大きな魔法使い。奇跡をいっぱい巻き起こすよ」
B01「大きいの?」
A02「大きいよ」
B02「魔法使いなの?」
A03「魔法使いだよ」
B03「奇跡は起きるの?」
A04「いっぱい起こすよ」
B04「奇跡が起きたら、それは陳腐っていうんだよ」
A05「知ってるよ。バナナという果物は手で簡単に剥けるし、そのまま生で食べられるけれど、あれって実は奇跡だよ」
B05「それは陳腐な奇跡だね。ミカンもライチもマンゴーも手で剥けるよ」
A06「何を隠そう、バナナもミカンも僕がつくったんだ」
B06「それはすごいことだね」
A07「奇跡だよ」
B07「けれど陳腐だ。どこにだってあるもの」
A08「そうだね」
B08「あなたは神さま?」
A09「魔法使いだよ。大きな魔法使いさ」
B09「僕がこうして生きていることも奇跡?」
A10「そうだよ。奇跡だよ。けれどそれは僕が起こした奇跡じゃないよ」
B10「魔法使いは他にもいるの?」
A11「そうだよ、例えば君のお父さんとお母さんは魔法使いだよ。彼らが愛してくれたから君がいる。それとご近所さんも魔法使い。彼らが愛してくれたから君がいる。あと友達も先輩も学校の先生もみんなみんな魔法使いさ」
B11「陳腐なお話だね」
A12「何より君が君自身を愛したからこそ君は生きている」
B12「ますます陳腐なお話だね」
A13「奇跡って陳腐だよ」
B13「陳腐なものを奇跡とはいわないと思うんだ」
A14「陳腐だけれど、それはきっと素晴らしいことだから、それはやっぱり奇跡だよ。心が、例えば君の心が、それを素晴らしいことだと訴えるなら、それはきっと誰かの魔法だよ」
B14「僕がポケットを叩いてもビスケットは2つに増えたりしないけれど、それでも魔法使いはどこかにいるの?」
A15「魔法使いはどこにでもいるよ。僕は魔法使いだし、君も魔法使いさ。誰にもビスケットを増やすことはできないけれど」
B15「いいや、ビスケットを増やすなんて簡単なこと。僕がバターと砂糖と小麦粉を混ぜてオーブンで焼いたなら、今すぐにでもビスケットはたくさん増やせるよ」
A16「それはまるで奇跡のようなお話だね」
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