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戦乙女と愛の行方

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3+α人用(女性1;不問2) / 1662字 / お人好しのジャンヌ・ダルクのお話

登場人物

A:女性。白き乙女。博愛の精神に突き動かされて人々を導く少女。
B:黒の将軍。将としての理想と責任を抱く武人。
X:モブ。白の軍勢。信徒とでも呼ぶべき色を帯びつつある。
地の文:地の文。

本文

(※Xは不特定多数のモブなので複数人で演じ分けてください)

 少女は白い国の軍隊を率いていた。白い兜の兵(つわもの)たちを引き連れて、白銀(しろがね)の鎧を身にまとい、真っ白な旗を翻しつつ、白馬にまたがり戦場を駆けていた。

A01「兵たちよ、私に続け! そして祖国に勝利を! 全軍抜刀、突撃!!」

X01『おおー!!』

X02「白き祖国に栄光あれ! 白き乙女に福音あれ!」

X03「我らに乙女の慈愛と祝福あれ! ……ひゃっほう!」

X04「黒い奴らをぶっ潰すぜ!」

X05「乙女に続け! 黒き軍勢に鉄槌を!」

X06「白に勝利を! 黒に屈辱を!」

X07「今こそ乙女の愛に報いるとき!」

X08「乙女のために!」

 白の国、先王の崩御に端を発した黒の国の侵略戦争。当初国力に勝る黒の軍勢が優勢であったこの戦争は、白の国が新たな指導者を戴くことにより拮抗をはじめる。その指導者とは、荒みゆく国においてただひとり瞳の輝きを失わず、切々と愛を説き続けた仁者。平民の出ながら、平民からも貴族からも等しく愛されたひとりの少女。人々の呼ぶところ、「白き乙女」と云った。

A02「たくさんの方が傷つきました。たくさんの方が亡くなりました。ですが、どうか前を見てください。目を開いて、前を見てください。そこにあなたの愛する人がいます。父、母、子ども、兄弟、友人、仕事仲間、敬愛する恩師……。たくさんの方が亡くなりました。その中にはあなたが愛した人も含まれるでしょう。ひどく悲しい、痛ましいことです。ですが前を見てください。今、あなたの目の前にいる大切な人。彼らの命が、今まさに奪われようとしています。あなたの愛した人を刺し殺した槍が、今、まさに、彼らにまで、突きつけられようとしています。立ち上がりなさい! 失いたくなくば、愛する人と共に生きるならば、立ち上がりなさい。私は立ちました。あなた方と、共に、生きるために!」

 人々は武器を取った。乙女と共に立ち上がろうと。この凛々しき乙女と生きようと。

X09『白き祖国に栄光あれ! 白き乙女に福音あれ!』

X10『白き祖国に栄光あれ! 白き乙女に福音あれ!』

X11『白き祖国に栄光あれ! 白き乙女に福音あれ!』

 白き乙女を切っ先として騎馬隊が黒い軍勢を切り裂いていく。騎馬隊の奇跡にはすかさず白い旗の歩兵たちが雪崩れ込み、今や黒き軍勢は完全に瓦解した。あとは、乙女の目前に迫る敵の将軍を捕らえるのみ。

B01「我こそは黒き軍勢を統べる将軍である。白の魔女よ、いざ覚悟!」

 すかさず乙女の前に3人の兵たちが躍り出る。

X12「乙女よ! ……ぐうっ」

X13「白き乙女にぃぃぃ!」

B02「くっ、どけ貴様ら! どかんか!」

X14「福音あれぇぇぇ!」

B03「ぐはっ」

 勝負は決した。地面に引き倒された黒の将軍に、乙女が問う。

A03「黒い国はなぜ白い国に攻め込んだのですか?」

B04「魔女め……。知れたこと。我が国、黒い国の民を守るためだ」

A04「……え?」

B05「北方の赤い帝国が勢力を伸ばしつつある。かの国の脅威がここに届く前に、我が国は一刻も早く力をつけねばならなかった」

A05「あなたは、あなたの愛する人々を守るために……」

B06「もはや黒い国は終わりだ。恨むぞ、人心を弄ぶ白の魔女よ。貴様さえ現れなければ、白の国などとうに……。魔女め」

 戯言だ。この戦争はそもそも黒い国が仕掛けたもの。大義は白い国にある。しかし。黒の将軍は、少女を魔女と呼んだ。魔女を恨むと。

A06「白い国の方は私を乙女と呼んで慕ってくれました。けれど……。いいえ、戦いは必要なことでした。私は白い国の人々を守りたかった。これ以上愛する人を失いたくなかった。けれど……。黒い国の人々を傷つけ、やがて赤い帝国の人も傷つけ、それから? いいえ、そもそも私は白い国の人々も、この戦争でたくさん、たくさん……。ああ、それでも、大切な人がいるのなら、私は立ち続けないと」

X15『白き祖国に栄光あれ! 白き乙女に福音あれ!』

X16『我らに乙女の慈愛と祝福あれ!』

A07「……ああ、私にはこんなにもたくさん、愛する人々がいる」

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