1人用(男性1) / 662字 / ヘンタイが噛み合ってしまったやつ
本文
学生の頃、彼女に「パンツ頂戴」って言ったらさ、彼女、あんかけにしてきたんだよ。
大皿に色とりどりのパンツを山盛りにして、その上からアツアツのあんをトローリ。仕上げに粉チーズをパラリと。それにラップを掛けて、新聞紙に包(くる)んで、スーパーのビニール袋に入れて持たせてくれたんだ。
「温かいうちに食べてね」「冷ましたら怒るよ?」「どうしてもって時は、せめて電子レンジで温めてね」なんて言ってさ。
そうじゃないんだ!
もうね、何が何だか、全くもって何なのか、正直、心を読まれたのかと思わなくもなかったけどさ、だけどコレじゃないんだよ! 俺が期待していたのは! もっと、こう、何だかな!
たまらず聞いたね。「何であんかけ?」って。そうしたらさ、彼女、言ったんだ。
「季節の変わり目は身体を壊しやすいからね」って。
その時だよ。一生こいつと連れ合おうと、俺は心に決めたんだ。
実際、あいつはいい嫁だよ。
世間じゃアレンジ料理はメシマズへの第一歩みたいな言われ方をしているけどさ、少なくともあいつに限っては全く当てはまらないね。
あいつのアレンジは……そう、「心づかい」なんだ。温かい「思いやり」なんだ。
仕事で疲れたとき、うまくいかないでムシャクシャしているとき、あいつの料理を食べるとほっとする。日々刻々と変化していく我侭(わがまま)な俺の体と心を、あいつはいつだって温かく受け止めてくれるんだ。
だから、すまん。俺は仕事帰りに寄り道はしないことにしているんだ。
今日もあいつが、パンツを履いて俺の帰りを待っているはずだからな。
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