1人用(男性1) / 686字 / 使い分けないくせにペルソナを被るお話
本文
はじめ、僕はただ友達が欲しかっただけだった。
だけど引っ込み思案の僕は他の子に上手く話しかけることができず、ようやく勇気を振り絞って声をかけた僕の顔は、まるで泣いているようだったらしい。
みんな心配してくれた。優しく励ましてくれた。だけど一緒に遊んではくれなかった。
ああ、僕はとことんだめな子なんだ。僕ひとりの力では笑うこともできやしない。
僕は泣きながら、笑顔の仮面を被った。
しばらくはそれでうまく行った。
少ないけれど友達もできた。
だけどいつしかまた僕はひとりぼっちになっていた。
仮面が泣き顔になっていたからだ。
僕が仮面の下で泣いていたせいで、涙で仮面がふやけてしまったんだ。
僕はまた、仮面の上から仮面を被った。
それから僕はいくつもの仮面を被った。
笑っていないと友達ができないから。
笑っていないと笑われるから。
笑っていないと嫌な奴に殴られるから。
笑っていないと好きな人に嫌われるから。
笑っていないと仕事にならないから。
笑っていないと息子が悲しむから。
だから、私は仮面を被った。
どんなときでも笑っている私を指して、ツラの皮の厚い奴だと蔑む者もいたが、何、気にするようなことではない。
私はこの笑顔で、幸せを掴んだのだから。だとするなら、私はむしろ誇るべきだろう?
私は今、笑えている。
笑顔の裏にいくつもの泣き顔を重ねてはいるが、それでもなお、笑えているのだ。
何の問題があるものか。
ところで、かつての私はどんな顔をしていただろう。とんと思い出せなくなってしまった。ま、どうでもいい話ではあるが。
なにせ、私は、今、笑えているのだから。
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