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首都大美術館

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1人用(不問1) / 455字 / メトロポリタンミュージアム

本文

 国民的人気の子ども番組で、ある日とても不思議な映像が流れた。
 寂しくも美しく、壮麗にして幽玄。

 子どもは、その映像を初めから終わりまで真剣な面持ちで見つめ、番組の終わりとともに父親に尋ねた。

 「今の、いったいどういう意味?」

 父親はうっとりと答えた。

 「お父さんにも難しくてよくわからなかった。だけど君を子どもと侮らず、君に美しいものを見せてくれたテレビ局の人には、感謝しないとね」

 子どもは首を傾げ、もう一度尋ねた。
 父親は子どもの瞳をまっすぐに見つめて言った。

「同じ疑問を、10人の大人たちに尋ねてごらん。きっと彼らは10人が10人、てんでばらばらの答えを口にするだろう。おそらくはそれこそが、在るものの意味というものさ」

 子どもは言われた通り、大人たちに尋ねて回った。果たして、10通りの答えが返ってきた。し
かし子どもには、結局あの映像の意味するところはわからなかった。

 やがて子どもは大人になり、ある日偶然に、あのとても不思議な映像を目にした。
 それは美しかった。

 彼が最も尊敬する人物は父親である。

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