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色眼鏡

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6人用(男性3;女性1;不問2) / 1855字 / 世界の見えかたが変わるSF

登場人物

A:ナレーション。イミフ。
B:男性。世界が赤い人。イライラ。
C:男性。世界が青い人。冷静……?
D:世界が暗い人。ウツダシノウ。
E:女性。世界が広い人。ポジティブ。
F:男性。うんこ。

本文

A01「いつかどこかで、とある人間たちは『他人の目を通して世界を見つめる』技術を手に入れた。比喩や誇張ではなく、言葉通り、外科的に他人の眼球を、視神経を、後頭葉を、側頭葉を、頭頂葉を、そっくりそのまま自分のものとして扱うことができるのだ。……『果たしてそれにどんな意味があるのか』あなたは疑問に思うだろう。……色眼鏡だ。あなたは物事を自分の色眼鏡で見つめているに過ぎない。それは自らの経験と照らし合わせ自らの思考しうる自らの世界の理に自らをどっぷりと浸した故の、あなた一人の感性だ。そこには現実にこの事件に触れた者たちの経験も思考も世界観も自我も一欠片とて在りやしない! ……さて、これが色眼鏡である」

B01「世界が真っ赤だ!赤。赤。赤。紅色、朱色、緋色、茜色、マゼンタ、カーマイン、アッシュローズ!世界は赤で満ちている!世界は赤で出来ている!ありとあらゆる赤がこの世界に集っている!赤。赤。赤。気が触れてしまいそうだ!君は、この目の持ち主である君は、この世をいったいどんな風に見つめていたんだ!」

C01「それは僕の台詞だ。世界が青い!空の色。海の色。サメの色。イルカの色。あの暑い夏の日に海辺で食べたかき氷の色。なんてことだ、世界は青かった! いいや、まさかそんなはずはない。先刻、私が私自身の目で見た世界は取り取りの光で鮮やかに輝いていた! なんてことだ、君の目は紛い物だ。あるいは腐っている! 早急に取り替えた方がいい!」

D01「世界が暗い。太陽も、月も、星も、文明の光さえも。何もかもが色あせて見える。何もかもが同じに思える。こんなにもつまらない世界が存在するとは思いも寄らなかった」

E01「世界が広い! いつも眺めていたあのお山の向こうにはまたお山があって、そのまた向こうにもお山があって、またお山があって。お空を見上げると花粉が飛んでたり、インフルエンザウイルスが飛んでいたり、流れ星が第二宇宙速度でかっ飛んでいたり! 世界って意外と不思議!」

F01「うんこが見える。人がうんこに見える。花がうんこに見える。雲がうんこに見える。パソコンがうんこに見える。2chの書き込みがうんこに見える。晩ご飯がカレーに見える。俺は……俺自身もうんこに見える。この世界は……うんこだ」

B02「赤い世界なんて普通じゃない!」

C02「まさか他人の目を通すだけでここまで世界が違って見えるとは」

D02「違って見える? いいや、違ってて、ちっとも見えないね」

F02「うんこ」

B03「世界を赤く見るなんてキ○ガイのすることだ!」

C03「落ち着きなさい。君からすると真っ赤な世界でも、僕にとっては色鮮やかで美しい世界なんだ」

B04「それがキ○ガイだと言っているんだ!」

D03「どっちでもいいさ。どっちでも大した違いはないのだから」

F03「カレー味のうんこか、うんこ味のカレーか」

E02「2つに1つとは限らないかもしれないよ。探してみたらもっとずっとたくさんのものが、きっと絶対に見つかるはず!」

C04「少なくともここに5つの世界がある」

B05「世界は1つだ。君たちは頭がおかしい! 俺たちが今立っている場所はどこだ?俺たちはそれぞれ違う世界に存在しているのか?違う!俺たちは同じ世界に生きている! このキ○ガイじみた真っ赤な世界でな!」

D04「真っ赤な世界とかいっそ羨ましい。色あせ、くすんだ世界に比べたらなんぼかマシな世界だろうに」

E03「きっとホントはどちらもそれぞれに素敵な世界なんだと思うな」

F04「うんこよりはね」

D05「いいねえ、君は希望に満ちていて」

F05「満ちてるものがうんこじゃなくて」

E04「違うよ。希望に満ちているのは私じゃなくて、この目の持ち主」

D06「その人はずいぶん前に自殺しちゃってるけどね」

E05「へえ、不思議」

C05「君、大丈夫? 顔色が悪いように見えるけど」

D07「それは君の目の方の問題だと思うね」

C06「あ、そうか。まぎらわしい」

B06「ああイライラする! どうして世界は赤いのか!」

C07「どうして世界は青いのか」

D08「何故世界は暗いのか」

F06「うんこ・ザ・ワールド」

E06「世界中みんな、ひとりひとり違った色を持っているわけで。それってつまり色とりどりってことじゃない?」

F07「誰がうまいことまとめろと」

A02「いつかどこかで誰かが問うた。『あなたが眺めるその夕日は、本当に赤いですか?』 ――もちろん赤いに決まっている。赤は、夕日の色なのだから。……これだって色眼鏡に違いない」

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